WEB制作業界で仕事をしていると、コンペ形式を希望されることがありますよね。
僕はWEB制作・コンサルティング会社を経営しているので、年に数件は『コンペ形式でお願いしたい』という依頼(問い合わせ)をもらいますが、僕の会社ではどんな高額であれコンペ形式は全て辞退しています。
そこで今日は、コンペ形式についてのメリットデメリットと、僕の会社がコンペ形式の仕事を請けない理由をつらつら書いていこうと思います。
業界内でも好き嫌いが分かれるコンペ形式ですが、一つの参考としてご覧いただければ。
目次
発注者視点でのコンペ形式
今回は僕(受注者)視点の記事なので、発注者視点は簡単におさらい。
発注者にとっての魅力
コンペは「出来上がったものから選ぶ」という発注形式なので、
- 思ったより低い品質になる心配が無い
- 見えるものができているのでIT知識が無い人でも判断しやすい
- 予算が確定しているので、追加費用の心配がない(少ない)
などなど発注者にとっては良いことずくしですよね。そりゃコンペ形式が人気になる訳です。
発注者にとっての課題
- 予算が低いと参加してくれない
- 基本的には納得いくものが無くても、いずれかに決めなくてはいけない
受注者視点でのコンペ形式
発注者視点を見て分かる通り、コンペ形式は概ね発注者優位の発注方式ですが、もちろん受注者にとっても嬉しいことがあります。
受注者にとっての魅力
- 案件単価が高い
- 修正が少ない
- 腕試しになる
案件単価が高い
受注者が発注前に作業を行う形式なので、リスクを加味してコンペ形式の案件単価は高めに設定されることが多いです。数千万という規模も少なくないので、年に1-2件取れるだけでも大分おいしいですね。
「コンペ大好き!」という会社さんは、ほぼこの価格帯が好きな理由です。
修正が少ない
また、コンペ形式は発注判断の時点で完成といえるレベルまで制作を進めるので、発注後の修正は1から制作するより当然少なくなります。
修正作業は制作業にとって悩みのタネなので、殆ど完成状態で受注できるのも嬉しいポイントです。
腕試しになる
コンペは形式的にもデザインクオリティで選ばれる傾向が強いので、ひとつの腕試しにもなるし、選ばれればそれが大きな自信につながります。
クラウドソーシングのコンペ形式はなんか変
これは完全に余談なんですが、流行りのクラウドソーシングサービスの「コンペ形式」はちょっとおかしなことになっていますね。
リスクが大きい分単価が大きいのがコンペ形式が成り立つ理由だと思うのですが、クラウドソーシングでは発注者が誰にも発注しないでOKだったり、通常の見積形式よりも単価が低かったり。
サービス自体は駆け出しのフリーランサー達にも機会が与えられる面で良いと思うんですが、「これ受注者に何のメリットが…?」と思ってしまう、通りすがりのこちらがむず痒くなるようなコンペ案件が多くて驚きます。
受注者にとっての課題
- ヒアリングがしにくい
- 決済者の好みに左右される
- 受注できなければ大赤字
ヒアリングがしにくい
コンペ形式は発注者が内容をまとめてから参加者を募るので、通常の見積型案件のように、ヒアリングを通して課題精査・ゴール設定などを最適化した状態での提案型制作が進めにくい傾向があります。
特に僕の会社は課題解決型の制作スタイルなので、ヒアリングを十分にできないことは非常にネックです。
決裁者の好みに左右される
価格帯が大きいため、発注者は比較的規模の大きい会社が多く、最終的に発注先を決める決裁者と、最初に依頼内容をまとめた担当者が異なる場合が殆ど。
そのため「内容に対してどんな提案が出ているか」ではなく、「好きか嫌いか」といった好みによる判断になってしまうことが多いのも現実です。
受注できなければ大赤字
発注が決まるまで報酬がもらえるか分からないので、選定のテーブルの乗せるまでの作業は全て自社負担です。コンペは「デザイン画」段階で行うことが多いので動画や写真掲載箇所などはアタリで良い場合もありますが、受注確度を上げるために事前撮影等を行ったり、サンプル動画を編集した状態で臨む場合もあります。
参加費として失注してもいくらか貰える場合もありますが、正直雀の涙ほどです。
丸々1プロジェクト分の作業を受注前に行うのですから、失注となれば大損害ですね。
僕の会社がコンペ形式の仕事を請けない理由
僕の会社ではコンペ形式を請けないと冒頭で記載していますが、過去にはコンペ形式に参加し実際に受注していた(1-2回だけですが)時代もあり、 ここまでのメリット・デメリットはその経験を元にしています。
最後に、僕の会社がコンペ形式不参加を決めた理由の紹介します。
- 「ホームページを売っている」わけじゃない
- 資金体力がない
- 出来レースがある
「ホームページを売っている」わけじゃない
コンペ形式は決まった予算で商品を戦わせる、言ってしまえば「ホームページの購入」のような発注形式です。 さらっと前述しましたが、僕の会社では課題解決型のWEB制作を得意としているので、出来上がったものを売るのではなく、発注者の課題や目的に寄り添って、最適な答えに二人三脚で進めることに重点を置いています。 この重視するポイントのアンマッチが、コンペ形式不参加を決めた理由の1つです。資金体力がない
これ、これです。 散々偉そうなことを言っておいて恥ずかしいですが、資金面がコンペ形式不参加を決めた一番大きな理由でした。 今も昔も僕は個人で運営していますが、資金体力がないと毎月目先の収入を確保しないといけないので、コンペ形式のようなリスクの高い案件を追いかける余裕がありません。 コンペ形式に参加している他社から制作費をもらう形で参加することはごく稀にあります。 今はありがたいことに単独でトライできる資金体力も付きましたが、ここに至るまでに「ホームページを売っているわけじゃない」の意識に切り替わったので、今後も参入はしない予定です。出来レースがある
これは裏話的ですが、世にあるコンペ形式には結構な割合で受注者が決まっているコンペ、つまり「出来レース」が混ざっています。
コンペに参加してる他社や発注者との会話で思わず知ることになったのですが、単価の高い案件は手をあげる会社も多いので、コンペに参加するだけでも関係者への根回しが必要だったりします。
そんな根回しありきの環境で出来レースが増えるのはイメージしやすいと思いますが、僕はそんな実情を知り、なおさら興味がなくなったわけです。
※さらに出来レースと知らず参戦してしまい、受注(ほんとは決まってた)した会社に企画を盗まれたことも。。
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