事業の立ち上げ、独立直後などに初めて価格設定をする時、必要以上に低価格を設定してしまうことがあると思います。
昨今フリーランスによる価格破壊が騒がれているのと同じように、僕も個人で仕事を始めた時は今では考えられないような低価格で仕事を請けていました。
しかし事業を続ける中で、低価格設定は自らの市場価値を下げ続ける行為だと感じ、価格設定を少しずつ高めて来ました。
そこで、僕が数年前までフリーWEBデザイナーとして働いてきた経験を元に、価格設定を見直した背景をまとめてみます。
大切な部分なので先に記載しておきますが、この記事では実力以下の価格設定をすることのリスクを紹介しています。
もし市場レベルと比較して明らかに実力不足なら低価格を維持しましょう。
目次
低価格に設定してしまう理由
低価格に設定するには色々な理由があると思いますが、殆ど場合は以下のような内容に収まると思います。
- 駆け出しで自信がない
- スキル不足を大目に見て欲しい
- とにかく実績数が欲しい
- 社員時代の給料を参考に価格設定している
- 低価格ぎフリーランスの長所だと思う
- 市場の相場価格が高すぎると思う
近頃フリーランスとして騒がれる方々は未経験だったりすることが多いので、1.2番目の理由が多いかもしれませんね。
冒頭で触れた通り、実力不足なのであれば実力をつけるのが最優先なので、価格を上げても上手くいきません。
しかし、不安だったり低価格をフリーランスの長所と考えていたりする場合は、以降の章を通して、違う見方もあるんだ。と思って貰えれば嬉しいです。
別にフリーの長所は低価格じゃない
フリーランスの方とお話すると低価格がフリーの武器と耳にすることがあります。
たしかに代理店経由の案件などと比較すればマージン分程度は下がりますが、実際にはそれ時給いくらなの?という程低価格にしてしまっている方が多いと思います。
しかし、これは大きな誤解だと思います。
現在僕はフリーランスの方に発注する立場ですが、費用が安いからというよりも、小回りが利く対応やスピード感、業者発注で発生する担当変更のような業務ロスが無いことにメリットを感じています。
さらに、仕事としての品質も業者発注よりフリーランスの方の方が高い場合も少なくありません。
フリーランスは働けば働くだけ収入が増える青天井ではありますが、会社員と違って毎月毎日仕事があるとは限らず、社会的な補償も一切ありません。
社員時代の給料を元に価格設定をしてしまっている場合などはこうした補償部分を自分の人件費から削る形で賄っている状態なので、想像以上に苦しい生活へ陥ってしまいます。
低価格は終わらせるための制作になる
フリーランスとして働いていると自分のスキルやノウハウ提供へ対価が貰えるので、ランサーズハイのような全能感もありがちです。
しかし必ず、低価格設定で生活を維持するには案件数をこなす薄利多売が前提なので、少ない時間で納品まで進めるしかなくなってしまいます。
そうなると、案件が取れても目的達成に向けた効果的な制作よりも、効率化など工数を削減する工夫ばかりに目が行き、終わらせるための制作という思考回路になってしまうでしょう。
効率化のみを重視した制作で効果が出る訳はないので、あなたの制作評価は安かろう悪かろうとなり、大きくやり甲斐のある案件は他社に取られ、その場しのぎの案件に磨耗される環境まっしぐらです。
低価格の競合は制作会社ではなく無料サービス
フリーランスの方の多くは制作会社を競合としていますが、本当の競合は無料サービス群だと思います。
CMSも今ほど主流でなかった時代はHTMLを触れるだけである程度食べられましたが、現在はBiND、jimdoなど、簡単なサイトであれば誰でも技術操作無しで、しかも無料で作れる時代です。
それらのテンプレートは見栄えも年々良くなっているので、値段だけで勝負することは最早難しくなっています。
また、ここまでの内容にある通り、低価格設定は品質を犠牲にした薄利多売の戦略です。
WEB業界は変化の早さが有名ですが、フリーランスは1人なので、案件に磨耗している間に市場とのスキル差がどんどん広がってしまいます。
低価格設定を続ければ続けるほど、自分の市場価値が下がる負のスパイラルが近づきます。
下げるより上げる方が難しい
ここまでは品質やスキルの視点でリスクに触れて来ましたが、最後に経営的な視点から。
事業を継続する中で、同じクライアントから継続して依頼をもらえることもあると思います。
価格を下げる分にはクライアントにメリットしかないので喜ばれますが、上げるというのは非常に難しいです。
クライアントから見れば、これまでと同じ作業量にかかるコストが上がる訳なので当然反感が起き、最悪の場合は関係解消の原因になることもあるでしょう。
この、必ずどちらかが我慢している状態になる。というのが価格設定を変える最大の障害ですね。
逆に、価格以上のメリットを提供出来ていれば、クライアントも価格設定の変更に協力してくれるはずです。
反感を避ける方法として、健在な状態ではないのでお勧めはできませんが、関係があるクライアントのみ過去の価格設定で継続するという対策もあります。
まとめ
このように、低価格を武器にした戦い方は品質とリソースを犠牲にするので、年々競争力が下がり、さらに低い価格帯で勝負しなくてはいけないという負のスパイラルが避けられません。
そんな背景から、僕の会社では価格設定をあげてきました。始めの設定が本当に低かったので、今の水準に至るまでに2-3回の改定を行っていますが、その中でクライアントに納得してもらえないことももちろんありました。
ただ、値段だけで選ばれる関係はどの道長続きしないので、その時は自分の至らなさとして低価格で請けてくれる別の会社様やフリーランスの方へ引き継ぎました。
適正な価格設定にしてから数年、今では以前よりも効果が出せ、その信頼が次の依頼を呼ぶという正のスパイラルを構築できるようになりました。
責任と価格は比例すべきです。それを踏まえて適正な価格設定をするのがポイントだと考えているので、僕の会社では当面(値上げの)価格改定は予定していません。
今回触れてきた低価格路線は法人でも存在しているので、フリーランスに限らない部分もあるかもしれませんが、この記事が低価格から抜け出せないで悩んでいる方の一助になれば嬉しいです。
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